海舟文庫

Re:一回の床屋①

一回間違えて公開して後悔。ナンチテ。削除してみたけど大丈夫ですかね、消せてますかね?しょうがないじゃないか今すぐ公開の横に下書き保存があったんだから(言い訳)。

昔書いた初々しい短編を、書き直してみようと思いついたのでやってみようかと。

原作遵守(笑)なので、やっぱりたまーに意味のわからない部分が出てくるかもしれませんが、なんとかあの頃の自分を憑依させて、その上で意味の通る文章になるよう頑張りました。

楽しんで書いたので頑張って読んでクダサイ。(のだめ感)


 住宅街の中、法定速度ギリギリで駆けていく、一台の灰色の車。その助手席に座る私は憂鬱な気分で、車窓から今にも雨の降り出しそうな曇り空を眺めていた。「今日は何もない。休みだ!」――どうしてか、気を抜いた日にこそ、事件は発生するらしい。全く、油断なんてするものじゃない。

 気分と相反して車内に流れる陽気なポップスにうんざりしながら、隣でハンドルを握るサングラスをつけた部下に声を掛ける。

「少しスピードを落とせ、田中」

「嫌ですね。こっちはせっかくの彼女と海辺でドライブデートする予定が潰れてるんです。気分くらい味わってもいいでしょう?」

 ――貴様はデートの時もこんな法定速度ギリギリで走るのか、とは口にしなかった。この使えない部下に何を言っても無駄だ。 

 私は後のことを考えて、せめて無駄なことに脳内リソースを割かないよう、座席に背中を傾け、目を閉じた。



 キキーッ、と大きな音を立てて止まった車。

 ドアを開けると、そこにはやたらと大きな家があった。その荘厳な景色とは裏腹に、空気はどんよりとしている。人が死んだのだから当然と言えば当然か。

 この豪邸は、藤花家という、ここら一帯では有名なセレブの住まいである。住宅街のど真ん中に大きく土地をとっていて、近所のおばさま方の絶好のゴシップネタになっている……らしい。私が風の噂で耳にしたのは、先代の当主が死んでから、その一人娘の金遣いがとんでもなく荒い、というもの。どちらにせよ、良い噂ではない。

「ああ、警部。お待ちしてました」

 黒い帽子を被った見知った刑事が駆け寄ってくる。

「ああ。それで、現場は?」

「こちらです」

 言葉を多く交わさずとも、黒い帽子の刑事が私たちを先導する。……具体的な指示を出さずとも私の意図を理解してくれるだなんて……田中と立ち位置変わってくれないだろうか。

 そんなことを思いながら、私は歩く。

 ──歩く。

 ────歩く。

 ──────歩く……!

「いやでかいなこの家ッ!」

 田中が不意に大きな声を出す。その気持ちは私も同じだ。田中が叫んでいなかったら私が叫んでしまい。私の寡黙な警部のイメージが崩れる所だった。危ない危ない。


「珍しく、いい仕事をしたぞ田中」

「え? 俺また何かやっちゃいました?」

「? ああ。ははは……そうですよね。あともう少しかかりますよ」


 私の小さな賞賛に、不思議そうな顔をする田中と、それを耳に入れることなく、道のりが長いと苦笑する黒帽子の刑事。私の口から思わず漏れたため息は、複雑な感情を包含していた。



 私──山田令二は、とある県のとある警察署に勤務している、とある警部である。

 最近、やけに物騒で、犯人の現行犯逮捕が難しい事件ばかり……それも、殺人事件ばかりが頻発している。

 そして、上の方で何か思惑があるのか、私はそんな妙ちくりんな事件ばかりを担当している。奇妙ということは面倒臭い。面倒な分、報酬は高い。でもやはり面倒臭い。しかも、この田中という部下。この使えない部下がいるせいで余計面倒臭い。(何回「面倒」と言ったでしょう?)きっと誰かの嫌がらせだ。そうでもなければこんな厄介な偶然が続くわけがない。

 今日の事件は、すぐに片が付けばいいのだが……。



 大きな庭を抜けて、竹林に入ると、やっと捜査員たちの集まりが見えてきた。

 少し思い返してみると、この竹林は屋敷の敷地内に入ってすぐの所で見た気が……

 いや、そんなことはない。あってはならない。私の歩いた十数分は無駄ではなかったはずだ。

 首を小さく振って思考を霧散させる私の顔を、覗き込もうとする田中の邪魔な頭を無理矢理退けて、目の前の光景を見る。

 髪の短い女性が地面に横たわっていた。すでに息はない。


「敷地内に竹林……まったく、金持ちの考えることは分からないですね」


 田中の感嘆しているポイントがズレている気がするが、今はどうでもいい。私は、よく死体を観察しようと近付いた。

 腹部を中心に血に染まっているワンピースを纏った体には、揉み合ったような小さな打撲痕が複数ある。


「被害者は、藤花家の一人娘である藤山蓮子、24歳です。配偶者もおらず、先日亡くなった父親の藤花吉之助を最後に、血の繋がった身内もいません」


 先程の刑事が、死体を調べている私に耳打ちする。


「検察によると、死因は腹部をナイフで刺されたことによる刺殺。死体発見時刻は11時10分、死亡推定時刻は今日の朝10時30分頃です」


 体には引きずられたような擦り傷や、砂埃がついている。おそらく、他殺。死亡後にこの竹林に運び込まれたのだろう。


「……ねぇ、警部」


 今度は田中が私に近づき、耳打ちする。

 ……嫌な予感だ。


「……自殺ってことにして、早く帰りませんか?」


 聞くんじゃなかった。


 たんこぶの出来た頭を押さえて、蹲っている田中を横目に私は思考を働かせる。

 さて。これは、ただの殺人&死体遺棄、そうとも取れる。

 だが、これはただの殺人事件ではないと私の勘が告げていた。というかただの事件なら、私は呼ばれなかっただろう。多分。

 私はまず、被害者について調べることにした。

「死体の第一発見者を連れてきてくれ」


こんな感じで場面ごとに分けて書き直していこうかと思ってます。

書き直すときにキャラクター達のイメージが段々と変わっていって、山田の頭が少し悪くなって、田中はクズになってしまいました。ごめんな、山田、田中……

あと、書き直すにあたって色々調べてみたんですけど、そもそも警部くらいの階級になると現場に出ないことの方が多いとか。銭形警部の印象が強かったので驚きました。やはりあの人が特殊だったんですね。


久しぶりにサイト見てみて、久しぶりに自分の文章を読んでみたら、ちょっと恥ずかしい気持ちになってしもうて。今なら意味がわかるように、幾分かマシなのが書けるんじゃあないかなと。

でもきっと五年後とかにまた見返して、そんでまた恥ずかしくなって、書き直すんじゃないかなあとか思ったりしてます。

昔より文章の質が上がってるといいなあ(願望)。

あと最後までこの書き直しが終わればいいなあ(願望)。

読んで下さりありがとうございました。そしてお目汚し失礼しました。また読んでくれると嬉しいです。


※10月3日 誤字修正